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2026.3.7

岡本圭司選手インタビュー第一話|挫折と立ち直り。「どこかに光はある」と信じて進んだ再起の物語

第一話|挫折と立ち直り

「どこかに光はある」──脊髄損傷を経験した岡本圭司選手が語る、あきらめなかった理由

「どこかに光はある」

── パラスノーボーダー岡本圭司選手が語る、絶望と再起、迷いの中にいる誰かへ、そっと差し出すメッセージ

スポットライトの下で飛んでいた男が、ある日突然、歩くことすらできなくなった。

プロスノーボーダーとして活躍していた岡本圭司選手。

競技の第一線にとどまらず、自ら映像作品を制作し、イベントを立ち上げ、スノーボード文化そのものをつくってきた存在。

その岡本選手が、ある日、脊髄を損傷するという大きな怪我を負い、それまでの日常が一瞬にして崩れ去った。

「脊髄損傷した時です。今でも右足の感覚はほぼない。」

岡本選手は、「これは挫折だったと思う経験はありますか?」という問いに、迷うことなくそう答えました。

今、岡本選手はパラスノーボードという新たな競技フィールドで活躍していますが、その裏には想像を絶する時間が横たわっていました。

 

■「立つことさえできなかった」── 絶望のはじまり

事故の直後、岡本選手はベッドの上にいました。

日々の生活が根底から覆され、これまで当たり前だった「立つ」「歩く」「滑る」といった行為が、突然すべて不可能になった現実。

「運動はおろか、立つことさえ出来ませんでした。

日々暗闇の中でした。

何のために生きていくんだろうという気持ちで、

ただベッドで時間が過ぎるのを待っていました。」

多くの人が「諦めないことが大切」だと口にするけれど、

それすらもできないほど心が沈んでしまうことが、この世界にはある。

岡本選手の言葉は、そうした本当の意味での絶望の存在を、静かに教えてくれます。

岡本選手は、自分が再び滑る姿など想像もできなかったといいます。

それは、単に肉体の損傷にとどまらず、精神の土台そのものを失うほどの衝撃だったのです。

 

■支えてくれたのは、「言葉」と「人」

それでも、岡本選手は今、再び雪の上を滑っています。

では、どうやって立ち上がれたのか?

その問いに対して、彼の答えは極めてシンプルでした。

「仲間と家族と病院の皆のお陰です。

背中を押され、厳しくされ、

大丈夫と言われ続け、支えられ、

少しずつ、少しずつ、少しずつ

自分の中で前を向けるようになってきました。」

岡本選手が口にしたのは、自分自身の努力でも奇跡的な回復でもありません。

「誰かが、ずっと言い続けてくれた」——その言葉に、すべてが詰まっています。

・「大丈夫」と信じ続けてくれる人がいたこと。

・厳しくも愛のある言葉をかけ続けてくれた人がいたこと。

・弱音を受け止めてくれる空間があったこと。

岡本選手は、それらがあったからこそ、何年もかけて「ほんの少しずつ」前を向けることができるようになったと語ります。

重要なのは、すぐに元に戻れるわけではなかったという事実です。

社会はときに、「立ち直り」をドラマのように語ろうとします。

けれど、岡本選手の言葉は、現実の立ち直りとは、泥だらけの時間を繰り返しながら、それでも前へ進もうとする日々の積み重ねでしかないという、静かな真実を教えてくれます。

 

■「今、元気な人にこそ、伝えたいことがある」

岡本選手は、いま落ち込んでいる人だけでなく、**「元気に過ごしている人」**にもメッセージを残してくれました。

「今、元気な時に、傲慢にならず、

大切なものを見極め、仲間や家族を大切にし、

日々真剣に、感謝して生きてほしい。」

これは、元気なをどう生きるかという問いかけです。

未来に訪れる困難に、私たちは完璧に備えることはできません。

けれど、「人を大切にし、真剣に、感謝して生きること」は、

未来のどこかで必ず自分自身を助けてくれると、岡本選手は言います。

「いつか絶対にくる困難に立ち向かう時に、

その時の頑張りが自分を助けてくれます。」

普段の行動や姿勢は、何か大きな意味があるようには見えません。

けれど、それこそが後に自分の支えになる。

岡本選手の経験から生まれた言葉には、言葉では語りきれない「時間の重み」がにじんでいます。

 

■「どこかに光はあると思います」

そして、今まさに深く落ち込んでいる人たちへ。

岡本選手が語るのは、勇気や元気を与えるような明るい言葉ではありません。

そのかわり、耐えることの尊さと、希望を持つことの可能性を伝えてくれました。

「すでに困難に面している人がいれば、諦めずに、とにかく耐えて欲しい。

どうすれば自分を保てるかを何とかして模索し、

その時が来るのを待ってほしい。

どこかに光はあると思います。」

明るくなれとは言わない。頑張れと押しつけもしない。

ただ、「自分を保つ方法を探してほしい」と伝えてくれる。

その時が来るまで、待っていい

この言葉に、どれほど救われる人がいるでしょうか。

人生において、何をしても気持ちが浮上しない時期があります。

そんなとき、「耐えること」「模索すること」「信じること」が、

どれだけ意味のあることなのかを、岡本選手は経験を通して教えてくれます。

 

■編集部より:牛乳石鹸が、岡本選手の言葉を伝える理由

牛乳石鹸は、「ずっと変わらぬ やさしさを。」というブランドスローガンのもと、

アスリートの活動や言葉を通して、社会にやさしさを届けたいと考えています。

岡本圭司選手のインタビューには、派手さはありません。

でもその代わりに、「人は人に支えられる存在であること」、

「時間をかけて少しずつでも前に進んでいいこと」、

「困難の中でも光を信じていいこと」が、静かに語られていました。

それは、私たち誰にとっても、いつか必要になる言葉かもしれません。